前回は『アドラー心理学の勇気づけの子育て』の基本的な考え方と子どもが不適切な行動(よくない行動)を取るのには必ず目的があるというお話を書きました
今回は「子どもが不適切な行動を取る目的とは何か?」がテーマです。子どもの行動の目的が分かれば、改善するための対応方法がわかりますよ!
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子どもの行動の目的は「注目」
子どもの行動の目的、求めているものは「注目」です!要するに、ママに構ってもらいたい!ということです。そんなこと?と思うかもしれませんが特に10歳くらいまでの子どもにとって「注目」は人格形成、さらには生死に関わる重要な要素なのです。
人間の赤ちゃんはママや周りの人たちにお世話をしてもらわなければ生きていくことができません。そのため、赤ちゃんには本能的に周囲の注目を集める能力が備わっています。例えば、0~2ヶ月の赤ちゃんが笑うのは嬉しくて笑っているのではありません。本能的な行動です。これは「生理的微笑反射(新生児微笑・生理的微笑)」という反射行動で笑うことで注目を集め、「周りの人たちが構ってくれる、優しくしてくれる」ための自己防衛反応だと言われています。
さらにもうひとつ、赤ちゃんと注目に関して興味深い実験があります。
フリードリヒ2世の実験に見る赤ちゃんの成長と注目の関係
神聖ローマ帝国の皇帝フリードリヒ2世が赤ちゃんに対してある実験を行いました。
「言葉を教わらないで育った子どもが、どんな言葉を話すのか」ということに興味を持ったフリードリヒ2世は50人もの赤ちゃんを集め部屋に隔離したうえで、次のような環境で育てることにしました。
・赤ちゃんの目を見ない
・赤ちゃんに笑いかけない
・赤ちゃんに話しかけない
・赤ちゃんとふれあいを一切しない
・しっかりとミルクを与える
・お風呂にはきちんと入れる
・赤ちゃんの排せつの処理をする
つまり、赤ちゃんが生きるのに必要な物理的なものはすべて与えスキンシップや愛情などの注目を与えずに育てるということです。フリードリヒ2世は「言葉を教わらないで育った子どもが話すのはヘブライ語だ」と期待してこの実験を行いましたが、結果は悲惨なものでした。50人の赤ちゃんたちは、愛情を示してもらえず、言葉もかけてもらえず、全員が1歳の誕生日を迎えることなく亡くなったのです。
この実験結果は、赤ちゃんに対するスキンシップや愛情の重要性を説明するのによく引用されるものですが、スキンシップや愛情などもすべて「注目」に含めることができます。こうした赤ちゃんの成長に関する実験はフリードリヒ2世の実験だけでなく、過去に複数回行われており、すべて同様の結果となっています。こうした結果から、子どもの健やかな成長において注目がいかに重要であるか理解いただけるのではないでしょうか。
とにかく子どもは「注目」が欲しい!!!
子どもにとって「注目が欲しい」というのは本能的な欲求です。よって、正しい注目を継続的に与えることが子どもの精神状態を安定させ、子どもが落ち着いた気持ち行動できる土台を築くことに繋がっていきます。
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注目不足・間違った注目が子どもに与える影響
ネグレクト(育児放棄)、幼児虐待、毒親など近年、話題となっている育児に関わる問題のすべては「注目」と関係があると私は考えています。ネグレクトは注目不足。幼児虐待や毒親は間違った注目。幼少期に正しい注目を得られなかった子どもは人格形成に問題を抱えてしまうことがほとんでです。
ここでは代表的な2つを紹介します
アダルトチルドレン
アダルトチルドレンとは「機能不全家庭で育ったことにより、成人しても内心的なトラウマを持つ」という考え方、現象、または人のことを指す言葉です。虐待やネグレクト、最近よく聞くようになった毒親との共依存、条件付きの愛情や過干渉などの影響によって人格形成に問題が生じ成人したあとも生きづらさを感じてしまうというものです。
アダルトチルドレンにもタイプがあります。
・いつもヘラヘラおどけて不安を隠すマスコットタイプ
・誰かに頼られることで自分の存在価値を見出すケアテイカータイプ
・周囲の期待に応えることで自分の自尊心を維持するヒーロータイプ
・周囲の意見に合わせることで自分の居場所を求めるプリンセスタイプ
・問題行動を起こして周囲の注目を集めるスケープゴートタイプ
・存在を消して生きることを諦めているロストワンタイプ
特に、問題行動を起こして周囲の注目を集めるスケープゴートタイプは注目不足で育った子どもの悪いケースと言えると思います。このタイプの場合、周囲からの注目を集めるという目的を達成するためなら手段を選びません。自虐・自傷行為に走ったり、万引きや暴走行為などの問題行動、アルコールなどの依存症に陥ることもあります。脅迫行為などもこれに当てはまると考えられます。例えば、彼氏に向かって彼女が「会いに来てくれなきゃ死んでやる!」とか言うのも彼氏の注目を自分に向かせるための手段です。また、立てこもり事件や脅迫事件などで「世間を騒がせたかった」という犯行動機が報道されることがあります。こういった事件も犯人の注目欲求の表れと捉えることができるでしょう。ここまでひどくはありませんが、子どもが言うことを聞かないという問題も原理は同じである場合があります。悪いことやいたずらすることでママの注意を引こうとする行動は子どもによくあることです。
自己肯定感(セルフエスティーム)の低下
こちらも最近よく聞く言葉ではないでしょうか?「最近の若者は自己肯定感が低い」などと言われていますね。自己肯定感とは、「自分は大切な存在だ、価値のある存在だ」と感じる心の感覚です。自己肯定感は、高い、低いと表現され、自己肯定感が高いほど「自分は大切な存在だ」と感じ逆に、低いと「自分は価値のない存在だ」と感じていることになります。
自己肯定感については、別の機会に詳しく書きたいと思いますが、自己肯定感が高い方が前向きに努力することができ成功しやすいと言われています。そして、自己肯定感の高さに最も影響を与えるのが子どもの頃の育てられ方なのです。ベストセラーにもなったポール・タフ著の『成功する子・失敗する子 何が「その後の人生」を決めるのか』によると母親から無条件の愛をたくさん注がれたかどうかが子どもの自己肯定感の高さに繋がるそうです。
さて、子どもの行動の目的は注目であることをお話ししてきました。そして、その注目が子どもの健やかな成長においてとても重要であること、子どもは本能的に注目を求めていることもお話ししました。子どもはママの注目を引くために問題行動を起こしたり
言うことを聞かないことがあるということです。
次の記事では、行動の目的となっている注目について詳しくお話しします。子どもとのコミュニケーションが円滑になる正しい注目についてお教えしますよ。
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